かつてガス窯は、「何となく使われている窯」でした。
師匠が使っていたから、周囲がそうだったから、電気窯はどこか安っぽく感じたから――理由は曖昧でも、ガス窯を選ぶこと自体が一種の“格”のように受け取られていた時代です。これは需要が先にあり、理由が後から付いてきた選択でした。
しかし今、その「何となくガス窯」は確実に姿を消しつつあります。
その代わりに残りつつあるのが、「理解して使うガス窯」です。ガス窯そのものが消えるのではありません。理解のない使い方が淘汰され、理解ある使い手だけが残る。その結果として、ガス窯を使う陶芸家の立ち位置は、むしろ一段引き上げられています。
現在のガス窯選択は、目的主導です。
還元を使いたい、表現を制御したい、炎の性格を選びたい。操作が楽かどうかではなく、「自分の表現をどう実現するか」という問いから逆算して窯が選ばれています。ここが、電気窯との本質的な違いです。
とりわけ象徴的なのが、女性作家でガス窯を選ぶ人の存在です。
力仕事や扱いにくさを承知の上で、それでもガス窯を選ぶ。その判断は、感覚や憧れではなく、思考と意志に基づいた選択です。だからこそ、その作品には説得力があり、自然と価値も伴います。
これからのガス窯ユーザーは、「感覚派」ではなく「思考派」になります。
火を感じるだけでなく、火を理解し、選び、使い分ける。その姿勢こそが、ガス窯を使う陶芸家を一段上の存在へと押し上げていくのです。

