やきものの秘密を解く3つの鍵

黄金比と炎、そしてやきものの神秘

「黄金比」と聞くと、私たちは美術や建築を思い浮かべます。
例えば、葛飾北斎の有名な浮世絵「神奈川沖浪裏」。
あのダイナミックな波の構図も、一説によれば黄金比に基づいていると言われています。
この黄金比は、ミロのビーナスやパルテノン神殿、モナ・リザなど、人の手で生み出された
数々の名作に使われてきました。
そして驚くべきことに、黄金比は自然界にも広く存在しています。
巻貝の渦やひまわりの種の並び、さらには銀河の形状にまで。
黄金比は、まるで宇宙の設計図に刻まれた法則のようです。

では、この黄金比が「やきもの」とも関係しているとしたらどうでしょう?

炎の温度がつくる黄金比

やきものを焼くためには高い温度にできる窯が必要で、焼成温度は、通常約1250℃です。
一方で、燃料となるLPガスが燃焼した際に達する「断熱火炎温度」は約2,000℃。
この断熱火炎温度とは、燃焼ガスが外部に熱を逃がさない状態で到達する最高の理論温度のこと
です。
また、炎そのものが成立するための最低温度は約1200℃といわれています。

ここで特筆すべきは、やきものの焼成温度(1250℃)がLPガスの断熱火炎温度(2000℃)の
およそ0.618倍であるという点です。

0.618は黄金比の重要な比率の一つ。

この関係を計算してみると、1250℃は2,000℃の0.618倍にわずか2%の差で近づきます。
これは誤差の範囲内といってよく、ほぼ正確に黄金比の比率を満たしているといえるのです。

黄金比がもたらすバランス

黄金比は、私たちが「美しい」と感じる調和の象徴とされています。
自然界ではエネルギーや力が最適に分配された結果として黄金比が現れることが多いと言われます。
やきものの焼成温度もまた、素材が最も安定し、美しく仕上がるための温度と考えると、この黄金比
の関係は決して偶然ではないのかもしれません。

やきものを焼く過程では、素材の粘土が結晶構造を変えたり、釉薬がガラス化したりと、さまざまな
変化が起こります。この全てが絶妙なバランスで起きる温度が、焼成温度1250℃なのです。
そしてそこに黄金比が現れることに、自然界や人間の創造の奥深い法則が隠されているように感じられます。

私たちの暮らしと黄金比

葛飾北斎の絵画に見られる黄金比の美しさ。
これと同じ調和が、やきものの焼成温度と炎の温度に潜んでいると知ると、普段使っているお皿や茶碗にも
新たな魅力を感じられるのではないでしょうか。
やきものを支える炎やその温度、そして自然界の法則。
これらが織りなすハーモニーを思うと、やきものの世界がさらに奥深く感じられるはずです。

今回は、やきものを解き明かす3つの鍵として、黄金比、断熱火炎温度、焼成温度(1250℃)の関係を
考えてみました。いかがでしたでしょうか。

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