窯焚きの三要素と季節の変化

窯焚き(焼成)とは、熱を利用して高温状態をつくり、窯の中の空気の状態を変化させながら作品を焼き上げる、いわば化学変化を利用した工程です。

化学反応は温度の上昇とともに活発になり、一般に1,000℃を超えると特に反応が進むといわれています。

この化学変化を支配する主要な要素は、「時間・温度・炉内雰囲気」の三つです。

焼成過程において、これら三要素をどのように変化させるかによって、物理的・化学的に作品の仕上がりが決まってきます。

したがって、各温度、あるいは温度帯ごとに、窯の中で何が起きているのかを理解することが重要になります。

やきものの焼成過程は、大きく「あぶり」「セメ」「冷まし」という三つの段階に分けることができます。

さらにそれぞれを三つの温度帯に分けて考えることで、窯の中で起きている現象が、より具体的に理解できるようになります。

窯焚きという一見抽象的な世界を、いったん細分化し、それを再び全体として組み立て直すことで、焼成への理解は深まっていきます。

昇温過程は連続した変化であるため、一部分だけを切り取って考えても、うまくいきません。

そこに至るまでの時間のかけ方や、炉内雰囲気の変化も含めて考える必要があります。

焼成温度一つをとっても、「最高温度」と見るか「焼成温度」と見るかで意味が異なります。

焼成温度の違いによって、同じ原料構成であっても、別の釉薬として扱われるものさえあります。

つまり、「何度で焼かれたか」だけではなく、時間・温度・炉内雰囲気という三要素が、どのように組み合わさって作用したかが、作品の結果を左右するのです。

さらに日本には、四季という日々移り変わる気候条件があります。

真冬と真夏では、30℃以上の気温差が生じることも珍しくありません。

気温差があるということは、空気の密度が異なるということでもあります。一般に、30℃の温度差があると、空気の密度は約1割変化するといわれています。

一方で、空気中に含まれる酸素の割合そのものは、季節によって大きく変わるわけではありません。

しかし、気温差による空気密度の違いから、同じ体積の空気に含まれる酸素の量は、夏と冬で異なってきます。

そのため、夏と冬では、昇温の仕方や炉内雰囲気のつくり方が、微妙に変化することになります。

さらに湿度の影響も無視できません。

関東地方や太平洋側では、冬は乾燥し、夏は高温多湿になります。

高温多湿の空気とは、膨張した空気の中に、燃焼に直接関与しない水分を多く含んだ状態ともいえます。

これらの気候条件は、「時間・温度・炉内雰囲気」という三要素のバランスそのものに影響を与える要因として、考慮すべきものです。

やきものの文献をひもとくと、

「青磁は月を見て焚き、辰砂は花を見て焚く」

(『陶芸の土と窯焼き』大西政太郎著)

という言葉が見られます。

日本において「月」は秋を、「花」は桜に代表される春を象徴します。

還元焼成で特に難しいとされる、鉄を呈色剤とする青磁釉、同じく銅を呈色剤とする辰砂釉を、美しい発色で得るためには、温度や炎だけでなく、窯焚きを行う季節さえも選ばなければならない――

この言葉は、そうした意味を示しているのでしょう。

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